整形外科医の自転車奮闘記

夏はロードバイク、冬はシクロクロス レースも少々

新城幸也選手、別府史之選手の怪我について勝手に考察

忘れかけていましたが整形外科医の自転車ブログでした。

では、たまには整形外科医らしく。

 

日本が誇る2大男性ロードレース選手である新城幸也選手、別府史之選手の怪我のニュースが届いてきました。

女子では萩原麻由子選手も怪我をしてリハビリ中とのこと。與那嶺恵理選手はお元気そうでかなり活躍してます。武井コーチが言うように無事これ名馬、めちゃくちゃ凄い成績出しているので、たしかにもっと報道されてもいいかも。

 

今回は整形外科医として新城選手、別府選手の怪我について勝手に考察します。

あくまで私個人的な考察と意見です。

 

まずは新城選手

肘頭骨折:これは文字通り肘の頭と書きますが、前腕にある2本の骨のうち尺骨の近位(肘関節側)の骨折です。肘を伸展する(伸ばす)筋肉である上腕三頭筋が付着している部位ですので骨折が離れる方向に力がかかります。よって骨折した時点でずれてしまっていることが多く、また安静にしても筋肉に引っ張られて骨折部が寄る(隙間が狭まる)ことは期待できないのでスポーツ選手でなくとも手術となることが多いです。

SNSで新城選手が出していた術後の写真ではtension band wiring法にて、きれいに整復固定されています。これは、ななめに入っているように見える細いまっすぐなワイヤーに締結用のワイヤーを結びつける方法で、古くからあるもので、現在でも広く行われています。レントゲンではさらに骨片を固定したと思われるスクリュー1本が挿入されており、骨折が多骨片であったことを物語っています。

大転子骨折:最初の報道で昔手術した大腿骨をまた骨折した。とありかなりドキッとしました。第二報で、手術は必要ないとのこと。大腿骨は骨折すると手術が必要になることが多いのですが、さてどうなったのか?と思っていましたが、レントゲン写真をみると大転子先端に骨折があります。この大転子は股関節を動かす重要な筋肉である中殿筋の付着部です。受傷により直接の外力もしくは中殿筋に引っ張られて大転子の先端が骨折したとものと予想します。骨片が大きな場合には手術が必要となりますが、小さい場合や転位(ずれ)がひどくない場合には保存治療(手術しない)となります。こちらはCTなどの結果保存治療が選択されたのだと思います。

レントゲンをみると以前骨折した時にいれた金具がまだ写っています。これが入っていたため大腿骨の剛性が高かったため今回は大腿骨の派手な骨折にならずに済んだ可能性もあります。手術をしたことがある人の中で入れた金具を抜いた経験のある人もいると思います。では抜釘術(金具を抜く手術)をしないほうがよいのか?という疑問が生じます。今回は詳細な受傷メカニズムは分かりませんが、金具のおかげで大転子骨折で済んだのかもしれません(あくまで私の意見)。しかし金具が入っていたせいで変な折れ方、つまり通常では折れないようなところで折れてしまうことが臨床の現場ではよくあり、時として治療を難しいものとすることがあります。ですので、今回に限って言えば抜く前であったため大腿骨は大きな骨折はせずに済んだ。と私は考えます。

大腿骨”は”と表現したことにも私なりの考えがあります。帰国後の精密検査にて骨盤骨折も指摘されました。こちらも手術不要とのことで、ほっと胸をなでおろしました。これも実は金具を抜く前であったことが関連している可能性があります。通常であれば大腿骨が折れる衝撃が加わったが金具のおかげで大腿骨は折れなかった、と仮定すれば骨折によって逃げる力がそのまま股関節を介して骨盤に加わり強い衝撃が骨盤に加わり骨折をきたした。と考えることができます。いずれにせよ大腿骨、骨盤とも手術を行わずに経過をみれるとのこと。本当に良かった。

新城幸也選手の復活を期待しましょう!

 

別府選手

新城選手は最近怪我多くて大変だな~、Fumyはそんなに怪我しないイメージだなと思っていたらSNSから鎖骨骨折の一報。

自転車界ではメジャーな骨折である鎖骨骨折。

これは胸の真ん中にある胸骨と肩甲骨の肩峰という部位の間につっかえ棒のように存在している鎖骨の骨折です。手をつかずに肩から地面に落ちると肩と胸郭の間の距離を保つつっかえ棒が衝撃に耐えきれずポキッと折れるというイメージでしょうか。肩峰との連結部位である肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨との関節だから肩鎖関節)が脱臼する肩鎖関節脱臼となることもあります。経験された方ももしかしたらいるかもしれません。Fumyの場合は鎖骨の骨幹部(真ん中のあたり)骨折です。鎖骨骨折は転位がすくなければ保存治療でも治癒させることができる骨折です。その場合鎖骨バンドといわれるたすき掛けみたいなバンドを装着します。これは胸郭を広げて胸骨と肩峰との距離を保ち、骨折を上から押さえつける役割があります。転位が大きかったり、早期復帰を希望する場合には手術を選択します。SNSのFumyのレントゲンを拝見すると手術できれいに骨折は整復されています。プレート越しに7本のスクリュー、プレートとは関係なく2本の骨片を固定するスクリューが挿入されています。これも多骨片であったことを物語っています。

別府史之選手の復活を期待しましょう!

 

2人とも手術を乗り越えられ、リハビリに励んでいることと思います。

私たちには何もできませんが、元気に復活され、また夢を与えてもらえるように応援しましょう。